本研究では、熱安定性の良いフェノール樹脂ナノファイバーシートを炭化することによって可撓性のあるカーボンナノファイバーシートを作製し、さらに表面を機能化することによって、電極一体型機能素子としてのデバイス応用を目指した基礎研究を実施する。本年度はファイバーの細径化と表面機能化について検討を行い、ファイバー径、内部構造、シート物性などの制御因子を明らかにした (1) カーボンナノファイバーシートの作製 最大で160kVの電圧を印加できるスピニング装置を製作し(既存装置では20kV)、エレクトロスピニング法によるフェノール樹脂ナノファイバーの作製について検討を行った。電場強度と溶液物性の検討によって直径100ナノメートルのカーボンナノファイバーが積層した可撓性に優れたシートの作製に成功した。また、化学的気相成長(CVD)法を用いて作製したカーボンナノファイバーの表面にカーボンナノチューブを成長させることに成功した。さらにカーボンナノチューブを高密度で繊維表面に垂直に成長させることが可能な反応条件を見出した。 (2) カーボンナノファイバーシートの評価 作製したカーボンナノファイバーについて炭酸ガスの吸脱着試験による比表面積測定と四探針法による電気伝導度測定を行い、カーボンファイバーの直径の減少に伴って、シートの比表面積と電気伝導性が向上することを明らかにした。カーボンファイバーの内部構造についてはラマン分光測定によって評価を行い、ファイバーの結晶性(グラファイト化率)は直径に依存せず一定であることを明らかにした。
|