本研究では、熱安定性の良いフェノール樹脂ナノファイバーシートを炭化することによって可撓性のあるカーボンナノファイバー(CNF)シートを作製し、さらに表面を機能化することによって、電極一体型機能素子としてのデバイス応用を目指した基礎研究を実施する。本年度は、センサ基板への応用を目指したCNFシートの電気伝導性制御とCNFシートを応用したデバイス(フィールドエミッタ)の作製について検討を行った。 (1) センサ基板への応用を目指したカーボンナノファイバーシートの電気伝導性制御 センサ基板への応用を目指してCNFシートの電気伝導性の制御を試みた。電界紡糸法により作製したフェノール樹脂ナノファイバーシートの炭化処理温度を検討することによって、10~1.0×10^6Ωの範囲で電気抵抗を制御できることを見出した。CNFシートは比表面積の大きな多孔性薄膜シートであり高感度・高速応答性センサへの応用が期待される。 (2) フィールドエミッタデバイスの作製・評価 CNF表面に高密度でカーボンナノチューブ(CNT)を成長させたCNFシートを作製し、その電界電子放出特性を評価した。CNFシート上に成長したCNTは優れた電子放出特性を示し、シリコン基板上に成長したCNTと比べて2倍の増幅係数を示すことを明らかにした。また、CNFシートの透過型電子顕微鏡観察からCNFとCNTの界面には欠陥が存在しないことを明らかにした。
|