研究概要 |
前年に引き続き、スチレンをモノマーとするマイクロエマルションにアゾ系開始剤を添加し、重水素ランプから紫外線を照射後、所定時間経過後に得られた高分子微粒子の直径分布を電子顕微鏡法によって測定した。温度、照射時間、重合時間をさまざまに変えて実験を行った。結果から、必ずしも低温で得られる粒子の方が分布が狭いわけではなく、高温でも、照射時間と重合時間を適切に調節すると粒子径分布の狭いものが得られることがわかった。このことは、連鎖移動反応で生じたラジカルが粒子外に脱出せずにその粒子内で成長反応を開始する確率が高温で高くなることを示唆する。最適な温度で重合することにより、平均粒子径21nm,CV値25%のものを調製することができた。ただし、この方法では重合率が低いことが問題であった。そこで、ノニオン性乳化剤を用いて転相しつつ重合させるという方法を開発した。スチレンをモノマーとする場合よりも、水への溶解度の低いジビニルベンゼンやパラメチルスチレンを用いた場合の方が得られる高分子微粒子の平均直径がより小さかった。転相乳化により調製されるモノマー滴や生成する高分子微粒子の間のモノマーの物質移動が粒子径の増加の原因となることが示唆された。開始剤濃度が高い方が得られる高分子微粒子の平均直径が小さかった。転相乳化中の重合により平均粒子系が26nm、CV値が20%、モノマーの重合率が80%以上の高分子微粒子を得ることができた。
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