研究概要 |
カーボンナノチューブは, 高品質な一次元ナノ構造が自己組織化的に得られ, ナノスケールの光電子材料として大変魅力的であるが, 具体的な光電子デバイスへの応用については全くの未開拓であり, 特にカーボンナノチューブ特有の光学物性・電子物性を活かした新たなデバイス応用の可能性を探求し, ナノフォトニクスの分野へ展開することが重要である。本研究では、カーボンナノチューブ特有の高品質な量子構造を活かして, 単一光子放出を実証するとともに, 将来の量子通信への展開を目指し, 電流注入による単一光子放出の可能性を明らかにすることを目的としている。 20年度は, これまで実現が困難であった安定かつ高性能なn型カーボンナノチューブFETを実現した。これは, 原子層堆積技術(ALD)により堆積したHfO_2に含まれる正の固定電荷を利用したものであり, 格子にドーピングが困難なナノチューブにおいて, 絶縁膜にドーピングを行えばとせくいが制御できることを示した重要な結果である。これによりナノチューブへの電子注入が容易となり, 発光デバイスが実現できるものと考えられる。また, 発光デバイスの試作に取り掛かり, カーボンナノチューブFETにローカルゲート構造を導入し, 電子ホール同時注入を可能とした。さらに, カーボンナノチューブの発光波長である近赤外領域において単一光子検出実験が可能な実験系の構築を行い, パルスレーザにより実験系の動作を確認した。
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