研究概要 |
今年度は,カーボンナノチューブ特有の強い励起子閉じ込め効果を活かした新奇光電子デバイスの可能性を探求するため,カーボンナノチューブの基礎的な光物性解析,カーボンナノチューブデバイスにおけるキャリア注入の制御手法,およびキャリア選択ゲート構造をもつ光電子デバイスを実現した. 具体的には,フォトルミネッセンスと光電流を同時に測定可能な素子を作製し,1本のカーボンナノチューブの光吸収断面積の評価を初めて実現した.さらに,as-grownのカーボンナノチューブのカイラル指数分布を評価するとともに、フォトルミネッセンス強度のカイラル指数依存性を初めて明らかにした. また,発光素子実現のためにはカーボンナノチューブに注入するキャリア(電子/正孔)を制御することが必須である.カーボンナノチューブFETに堆積した時に導入される界面電荷により,従来,大気中では困難であった電子注入を実現した.さらに,界面電荷密度を加熱処理により制御し,p型素子も実現した.この技術により,1本のナノチューブにp型素子とn型素子を集積し,CMOSを実現した.作製したCMOSにおいて入出力整合のとれた反転動作を確認し,高い電圧ゲイン(~26)を得た.この電圧ゲインは,入出力整合のとれたナノチューブCMOSでは世界最高性能である. さらに,電流注入による発光素子実現のため,ナノチューブFETのソース・ドレイン電極にキャリア選択ゲートを設置した素子を試作した.ゲート電圧により極性の変化するダイオード特性を実現し,電子,正孔の同時注入を確認した.
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