研究概要 |
本研究は, 地理情報システム(GIS)と空間データを活用して, ワーキングマザーの仕事と子育ての両立における保育所アクセシビリティの重要性について分析することを目的としている. 初年度である平成20年度では, まず,保育サービス, アクセシビリティ, 女性の就労形態に関する既往研究のレビューと整理を行った, 近年, 保育需要が急増しており, 保育所の質を確保した上での量的な拡充が喫緊の課題であること, 保育所アクセシビリティは共働き世帯の保育所選択や居住地選択において重要な要因であること, 保育所アクセシビリティは児童の年齢や地域により大きな差があること, 保育所アクセシビリティは母親の就労行動に大きな影響を与える可能性が高いことなどが確認された. 次に, 保育所と関連する資料および空間データを調査した. データの収集・利用可能性と, 特に都市部において待機児童が爆発的に増加していることを考慮し, 対象地域を東京都とし, 初期的分析は文京区を対象に行うことにした. 東京都と文京区の保育所と空間データを収集し, 分析用に加工した. その結果, ここ数年間で0, 1歳児といった低年齢児の保育需要が増大しており, 保育所需給のミスマッチが母親の継続就労や就業に深刻な影響を及ぼしている可能性があることがわかった. 保育所アクセシビリティの分析には, 詳細な空間データを用いることが望ましい. 詳細な空間データを用いた既往研究はいくつかあるが, それらは主に個人の活動日誌に基づく分析であり, 供給量を考慮した分析はみられなかった. また, 保育所アクセシビリティと母親の就労行動を実証的に分析した研究は海外に多いが, 詳細な空間単位を用いた研究はみられなかった, そこでまず, 町丁目や基本単位区レベルの細かい空間単位を利用して, 保育所需給のミスマッチを定量的・空間的に把握できる保育所アクセシビリティを測定し, 分析することにした.
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