研究概要 |
本研究の目的である「ナノ・マイクロエンジニアリングにおける数理的最適化の展開」について,平成22年度の研究計画に従い,「数理最適化アルゴリズムの評価実験および改良」に焦点をあてて研究を行った.主に得られた研究成果を以下に記述する. 1.誤差に強いロバストなアルゴリズムの構築 誤差の絶対値を最小にするような関数に対する最適化問題は,ナノ・マイクロエンジニアリングでしばしば出現する.これらの問題に対し数値計算を行なうと,微分できない点の周辺で数値精度が不安定になり,結果として計算が破綻することが多かった.本研究ではこれらのタイプの関数に対して,変数変換などにより不安定性を解消できることを示し,実際の問題に適用し非常に精度の高い解を得ることに成功した. 2.厳密計算が困難な問題に対する定数近似比率アルゴリズムの開発 本研究課題の対象である「誤差に強いロバストなアルゴリズム」が要求されている問題群の中には,いわゆるNP-困難とよばれる厳密計算が非常に困難である問題が存在する.このような問題の一種である,ある種類の制約条件付き移動距離最小化問題に対して,定数近似比率で近似を行なうアルゴリズムの開発に成功した.従来この種の問題に対しては経験的解法が使うのが主であったが,近似比率の保証ができていなかった.本研究の成果により,どんな入力パラメータに対しても最適解に対する定数倍の近似比率を保証する,高速な多項式時間アルゴリズムの構築が可能となった.
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