研究概要 |
本研究では90年代以来金融実務や学術分野で注目を集めるVaRとCVaRを最小化するポートフォリオ最適化問題に、ノルム制約(ないしはノルムを考慮した目的関数)を追加したポートフォリオ選択モデルを取り上げ、統計的学習モデルの1つであるv-SVM(v-サポート・ベクター・マシン)に対する理論的結果を利用し、提案するモデルの理論的な裏付けの探求と計算実験に基づく実証研究を行うことを目的とした。 当該年度は最悪ケースのコヒレント・リスク尺度を最小にするような、ロバスト最適化タイプの定式化が、罰則項付きコヒレント・リスク最小化になることを示した。これは過年度に展開してきたノルム制約付きCVaR最小化ポートフォリオ・モデルを、最悪ケースCVaRの最小化というロバスト最適化の文脈に沿って解釈するものであると同時に、CVaRを含むより広いリスク尺度についても拡張して成り立つことを示している。罰則項としてノルムを採用することは比較的自然に思われるが、どのノルムを選択するかという点で検討の余地が大きい。そこで本研究では、収益率の確率的な振る舞いを記述するモデルとしてよく使われるマルチファクター・モデルに着目し、その誤差分布(の分散共分散行列)から誘導されるノルムを用いることを提案した。日経平均採用銘柄に対する適用を行った結果、経験分布をそのまま利用したCVaR最小化モデル、ファクターモデルの推定をそのまま採用したCVaR最小化モデル(Konno,Yuuki,Waki(2002))といった、従来提案されていたCVaR最小化モデルに比べ、事後パフォーマンスが格段に改善することが示された。これらの結果については、米国オースティンで開催されたINFORMS Annual Meetingで報告を行った。
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