研究概要 |
本研究では, 移動速度推定手法の確立と救急車シミュレータ開発に資する研究について取り組んだ. 研究初年度の研究実施計画は, ヒアリング調査と救急データのデータ分析, 主軸となるアルゴリズムの基本理念を構築する事である. これらに関する具体的な取り組みと活動を以下にまとめる. 1. 近隣の消防署に研究協力を依頼し, 救急搬送に関するヒアリング調査をおこなった. また, その消防署で電子的に保有している7年分の救急データを提供して頂いた. この救急データのデータ分析を行うことにより, 救急車の呼出件数が曜日や時間帯などの属性によって大きく異なることが確認された. また, 呼出件数の属性ごとに集計されたデータに対してデンドログラムを作成し, クラスター分析などをおこなった. さらに地理情報システムを利用し, 地理的分布についてもさまざまな属性ごとに視覚化した. これらの研究は, 南山大学オープン・リサーチ・センターの公開研究会にて発表した. 研究課題のシミュレータ開発においては, これらのデータ分析結果を活用し, 現実の問題と理論が乖離しないよう留意する. 2. 主軸となる移動速度推定手法のためのアルゴリズムを構築し, 基本的な理念をまとめた. このアルゴリズムでは, パラメトリックに変化する枝長を持つ2種類の枝から構成されるネットワークにおいて, 枝長の2つのパラメタが変化する場合の最短路木をすべて列挙する. ここでのネットワークとは道路網ネットワークであり, 枝長とは道路の長さを移動速度で除したものである. このアルゴリズムによって効率的に最短路木を列挙し, 現実的な時間で最適な移動速度の推定値を得ることが可能となる. アルゴリズムの基本理念の一部については, KSMAP合宿in明日香村にて研究発表し, 評価を頂いた.
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