研究概要 |
本研究は, 東アジアの物流に関し, 時間の概念を取り入れた海上輸送と陸上輸送とを統合した輸送ネットワークによる物流シミュレーションを行い, 統合ネットワークの数理的分析および, 全体輸送効率から見た海上輸送システムの改善を行うことを目的としている. 初年度は (1) 東アジア域内の海上輸送および陸上輸送を統合した時空間ネットワークを構築 (2) 現状の国際・国内物流を時空間的に解析し, 地図上に表現 (3) シミュレータの開発(途中)を行った. まず, 海上輸送を表すために, Lloyd's社が提供しているコンテナ貨物船の船舶動静データ(2007年)の地点データおよび, 書籍の航路図とデジタル世界地図をもとに, 約1700の地点を結ぶデジタル航路ネットワークを作成した. 次に, 陸上輸送を表すために必要となるデジタル道路地図データに対し, ネットワークの位相幾何学的情報を活用して, 幹線道路ネットワークを構成するための手法を開発した. 一般のデジタル道路地図データは, 広域的な輸送問題を解くには, データが詳細すぎるので, 元の道路ネットワークの特性を維持したまま, ネットワークの規模が縮小された幹線道路ネットワークを構成することは重要である. 本成果は論文としてForma誌に発表した. そして, 船舶動静データから得られたODデータを上述のデジタル航路ネットワーク上の最短航路に配分することで, コンテナ貨物船による現状の物流をデジタル地図上に表現した. このとき, 出港日と着港日を考慮することで, 任意の時点における船舶の位置と船速を推計し, 船舶の時空問的解析を可能にした. さらに, 新規航路として北極海航路が実用化された場合に, どのような影響があるのかということを開発中のシミュレータを用いて推計した. この成果は今後論文として発表する予定である.
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