虹彩認識精度を向上させるために、局所領域の輝度変化を特徴量とした虹彩コード化法(局所輝度コード化法)を携帯情報端末開発プラットホームに実装し、処理の高速化および虹彩認識性能の評価を行った。また、虹彩の写真などを用いた偽造に対応するために、虹彩輝度変化率と瞳孔収縮率を組み合わせた生体検知法の開発を行った。 1. 局所輝度コード化法の高速化 虹彩認識の精度が高い局所輝度コード化法を携帯情報端末に実装し、処理時間の計測を行った。局所輝度コード化法は、回転変化に対する許容範囲がせまく認識率に影響を与えやすい特性がある。そこで、これまでは回転拡散ネットにより得られた認識方位を基準として、±5°の範囲を1°ごとに回転補正を行っていた。しかし、従来の回転補正法による認証では処理量が多いため、携帯情報端末での処理時間が17.12秒となった。そこで、極座標変換画像を回転方位方向ヘシフトすることで回転方位補正の計算量を低減し、さらに、重複する虹彩領域のコード化処理を削減することでコード生成処理の高速化を図った。その結果、認証に要する時間が1.13秒となり大幅に処理時間を短縮することができ、実用的な認識時間を実現することができた。また、20人分の虹彩画像を用いて認識率を調査した結果、従来の回転補正法を用いた局所輝度コード化法と同等の認識率を得ることができ、処理の高速化による影響がないことを確認した。 2. 虹彩輝度変化率と瞳孔収縮率を組み合わせた生体検知法の開発 虹彩輝度変化率と瞳孔収縮率を用いた生体検知法を開発するために、瞳孔反応時の虹彩の写真を用いた偽造虹彩と生体虹彩に対する虹彩輝度変化率および瞳孔収縮率を調査した。その結果、虹彩輝度変化率および瞳孔収縮率がともに生体虹彩と偽造虹彩で有意な差があり、これらの指標を組み合わせることにより生体と偽造の識別率を向上させることができることを明らかにした。
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