核四重極共鳴(NQR)は物質に固有の共鳴周波数を測定する方法であるため物質の特定が可能であり、X線検査装置のみを用いる場合よりも正確な爆薬検知を実現する技術として期待されている。しかしながら、NQR信号は元来微弱なものであり、現在の計測方法では特に低周波数側に共鳴を持つ物質の検知が難しく、多くの爆薬に対応するには感度の向上および信号強度の増強が望まれる。 本年度前半は、NQR信号の増強について検討し、二重共鳴の一種である試料中の別の原子核のゼーマン分裂の緩和を利用した交差緩和によるNQR信号増強が可能であるかを実験により確認した。対象試料磁化後のNQR信号強度における時間変化を観測し、その特性を利用することNQR信号の増強が可能であることを示した。
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