火山噴火で発生した噴煙を記録した映像にParticle Image Velocimetry法(以下、PIV法)を適用し、噴煙の速度を定量的かつ面的に抽出することを試みた。平成20年度は、桜島火山の昭和火口から発生した火山噴煙を主な研究対象とした。昭和火口での噴火に注目した理由は、同火口において2006年以降、噴火活動が活発になっている上、2008年2月に「噴煙柱崩壊」と呼ばれる火山活動の中でも特に危険な現象が、小規模ながら発生したからである。「噴煙柱崩壊」は、噴煙の一部が上昇速度を失って落下し、火砕流を発生させる現象である。昭和火口の噴火でも山麓に向かって火砕流が約1.5キロ流れ下ったため、防災的な観点からも、同火口での活動の検討が急務であると判断した。平成20年度は、昭和火口から発生する噴煙を撮影することを目指して、本研究課題以外の経費による出張を含め、計4回、桜島火山を訪問し、撮影の機会を探った。しかし、残念ながら訪問中には噴火が発生せず、本研究課題で購入した撮影システムでは噴煙を記録することができなかった。そこで、京都大学防災研究所火山活動研究センターが日本放送協会と共同で撮影した噴煙映像を同研究所から提供していただき、その映像にPIV解析を適用することを試みた。本来のPIV法は、流体の流れに追随して運動する粒子の移動量を同定して、流れそのものの速度を求める流速測定法であるが、本研究では、粒子の代わりに乱流渦の濃淡をトレーサーとする逐次棄却法(加賀・他、1994)を適用して、噴煙の移動速度の抽出を試みた。解析は、噴煙映像をグレースケールに変換した上で、各フレームの画像を噴煙発生直前の画像と差分を取ったものを解析対象とするなどの工夫を加えた結果、乱流渦の濃淡が明瞭な、天気が良い日中に発生した噴煙映像に関して、信頼できる速度分布を得ることに成功した。
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