研究概要 |
火山噴火予知のための重要な観測項目である火山ガス(二酸化硫黄)放出量の計測は紫外光吸収の原理を用いて行われている。しかしながら, 紫外光が大気中のエアロゾルによって散乱してしまうため, 紫外線吸光度が減衰し, 火山ガス放出量が低く評価される事態が起こっている。火山活動に関与するマグマ量を推定するためには, 火山ガス放出量を精度良く求めることが要求され, 噴火予知のためにも欠かせない情報である。本研究においては, 紫外線吸光度の減衰にエアロゾルがどの程度関与しているのかを明らかにし, 火山ガス放出量の減水量の定量化をめざし, 大気中のエアロゾル量と火山ガス放出量の同時計測に取り組んだ。 平成20年度はエアロゾル量計測装置(パーティクルカウンタ)を9月に購入し, 研究室内でのテストを経て, 10月以降に阿蘇火山での試験観測に入った。20年度はキャンペーン観測として, 試行錯誤的に計測を実施したため, 火山ガス放出量の減衰項である紫外線吸光度と比較できるほどの優位な計測データは得られていない。しかしながら, 計測の問題点及び計測法の習熟は完了し, それらの問題点を解消し, より連続的な大気環境変化を捉えるため, 21年度からは連続観測を行うことを予定している。 一方, 20年度は火山ガス放出量の基礎データ収集にも取り組み, 20年度は火山活動が活発化してきた口永良部島及びテストフィールドとしての阿蘇火山において火山ガス放出量計測を実施した。特に, 口永良部島においては火山活動の活発化と共に増加する火山ガス放出量を捉えることに成功し, 気象庁の火山活動予測のためにデータが提供され, 口永良部島に発せられた噴火警報の一情報として活用された。
|