研究概要 |
火山噴火予知のための重要な観測項目である火山ガス(二酸化硫黄)放出量の計測は紫外光吸収の原理を用いて行われている。しかしながら,紫外光が大気中のエアロゾルによって散乱してしまうため,紫外線吸光度が減衰し,火山ガス放出量が低く評価される事態が起こっている。火山活動に関与するマグマ量を推定するためには,火山ガス放出量を精度良く求めることが要求され,噴火予知のためにも欠かせない情報である。本研究においては,紫外線吸光度の減衰にエアロゾルがどの程度関与しているのかを明らかにし,火山ガス放出量の減衰量の定量化をめざし,大気中のエアロゾル量と火山ガス放出量の同時計測に取り組んだ。 平成21年度はエアロゾル量計測装置(パーティクルカウンタ)の連続観測を阿蘇中岳近傍にある京都大学本堂観測所で実施した。連続観測は比較的良好に取得され,降雨後のエアロゾル減少,火山ガスの流下に伴う一時的な増加が観測できた。しかしながら,二酸化硫黄放出量計測との同時計測が頻繁に実施する事ができなかった。これは,阿蘇での計測に出向いた際における天候不良が最大の要因である。しかしながら,連続観測は今後も実施する予定であるので,年間を通してのエアロゾル量の変動を明らかにし,二酸化硫黄放出量の計測で生じる散乱問題との解明へと繋げたい。 一方,21年度も火山ガス放出量の基礎データ収集にも取り組み,火山活動が活発化してきた桜島及び口永良部島において火山ガス放出量計測を実施した。特に,桜島においては,火山爆発直前の一時的な火山ガス放出量の低下(火道閉塞)を観測することに成功した。これは,今後の火山爆発モデル構築へ向けた貴重な基礎的観測データになると考えられる。
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