研究概要 |
大地震の連鎖可能性を評価するために2種類の物理モデルの枠組みを検討した。1つは断層の摩擦則に起因する連鎖可能性を評価するためのモデル,1つは3次元粘弾性構造に起因する連鎖可能性を評価するためのモデルである。今後はこれらを融合することにより,更なる高度化が期待される。 前者に関連して,新潟県中越地域の六日町断層の物理モデルを用いてモンテカルロ・シミュレーションを実施し,周辺の地震による応力擾乱の影響(連鎖可能性)を評価した。具体的には,六日町断層周辺の地震がもたらす静的な応力変化が六目町断層の地震発生にどのような影響を与えるかについて,状態と速度に依存する摩擦則に従う断層の物理モデルを用いて検討した。その結果,地震サイクルのどの時期に応力擾乱が与えられるかによって次の地震が遅れるか早まるかが系統的に変化することが明らかになった。この原因として,断層深部での非地震性すべりが原因となっていることも明らかになった。得られた成果は国際論文として発表した。 後者に関連して,2004年中越地震と2007年中越沖地震との関係を明らかにするために,まず各断層ジオメトリに関する一連の研究をレビューした。地下速度構造データを収集し,地震,測地データと併せて地殻一マントルの3次元粘弾性モデルを構築した。得られたモデルに各断層を埋め込んで有限要素法による数値シミュレーションを実施し,2004年中越地震によるクーロン破壊関数の変化(△CFF)を評価した。その結果,地震直後は2007年中越沖地震が発生した領域で△CFFが負値をとるが,パラメータの設定によっては,粘性の影響で3年後には正値に変化することが分かった。得られた成果は地球惑星科学連合および米国地球物理学会で発表した。
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