研究概要 |
火山災害において最も深刻な災害を引き起こすひとつである噴煙について,そのダイナミクスの理解と挙動の再現・予測を目的に数値シミュレーション研究を行った.爆発的火山噴火では,火山灰と火山ガスからなる噴煙が火砕流として周囲数十kmの範囲を荒廃させ,同時に噴煙からは多量の火山灰が周囲数百km,数千kmに降り積もる.爆発的火山噴火はピナツボ1991年噴火のような大規模噴火から毎年各地で起こるような小噴火まで様々な規模があり,噴火規模の指標となる噴出率の桁は6桁以上に及ぶ.特に,小中規模の噴火は,計算分解能と計算速度の関係から数値シミュレーションが難しい.本年度は,より小さな噴火の噴煙挙動を再現できる数値プログラムの開発を中心に行った.火口付近の細かな構造と噴煙全体の大きな構造を同時に再現するための一般座標系を組み込んだ新たな噴煙プログラムを作成した.その結果,ピナツボ規模の噴火から噴出率がその1000分の1程度の噴火までをシミュレーションすることが可能になった.また,火山噴煙ダイナミクスを主に支配すると考えられている乱流混合効率を数値計算結果から直接求めることに成功し,最近の室内実験研究等で示唆されていた乱流混合効率の局所的変化を噴煙の場合にも存在することを明らかにした.特に,火口付近で浮力が大きく変化するような領域では,単純なジェットやプルームよりも乱流混合効率が小さくなるため,防災上重要となる火砕流の発生条件にも大きく影響することが示唆された.
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