研究概要 |
最も深刻な災害を引き起こす自然災害のひとつである火山噴煙について,そのダイナミクスの理解と挙動の再現・予測を目的に数値シミュレーション研究を行っている.爆発的火山噴火では,火山灰と火山ガスからなる噴煙が火砕流として周囲数十kmの範囲を荒廃させ,同時に成層圏まで上昇した噴煙からは多量の火山灰が周囲数百kmの範囲に降り積もる.また,噴火の規模によってもその災害範囲は大きく変化するため,数オーダーに渡るスケールの現象を再現できる数値プログラムが必要となる.さらにそのプログラムによる数値シミュレーション結果から,噴火条件と噴煙防災の関係を防災上利用可能な単純な形で結びつけることが最終目標となる. 1年目である平成20年度は,比較的計算量が小さな大規模噴火から膨大な計算量が必要となる。小中規模噴火までを再現できる数値プログラムを構築した.2年目である本年度は,作成したプログラムを用い,噴煙内部で起こる乱流混合の基礎的理解を目指した.数値計算の結果,小中規模噴煙における乱流混合効率は単純なジェットやプルームとは異なり,高度によって変化することが初めて判った.同時に,3次元シミュレーション結果を基に非常に詳細な渦の構造を可視化することで,乱流混合効率の変化が渦構造の変化に対応することを明らかにした.以上の結果は論文誌上に発表した.乱流混合効率の変化は噴煙が火砕流を発生させるか否かに密接に関係するため,最終年度の平成22年度に作成を予定している噴煙のレジームマップ(流れの相図)の理解に役立つと期待できる.
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