研究概要 |
爆発的な火山噴火では,火山灰と火山ガスからなる噴煙が大気中に放出され,大きな災害を引き起こす.噴煙が上空へと上昇すると非常に広範囲に降灰被害をもたらす.一方,噴煙が地表面を流れ下ると高温の火砕流となり,火山近隣を焼き尽くす被害をもたらす.したがって,火口での噴火条件が与えられた時に,噴煙の高度や拡大半径,火砕流の発生条件を予測することが防災上重要な問題となってくる.本プロジェクトでは,大規模数値計算に基づいて,火山噴煙ダイナミクスの理解とその防災利用を目的に研究を行った. 前年度までに,大規模噴火から,膨大な計算量が必要となる小中規模噴火までを再現できる数値プログラムを開発し,噴煙高度や火砕流発生条件を支配する噴煙内部の乱流混合について非常に高精度の数値シミュレーションを行った.その結果,噴煙内部では高さによって乱流混合効率が異なることを明らかにした.特に,火口付近では混合効率が小さく,これまで予想されていたよりも火砕流が発生しやすいことが予想された.そこで,以上の結果を確かめるために,多数の大規模シミュレーションからなるパラメータスタディを系統的に行い,これまでにない詳細な火砕流の発生条件を成果として得た.さらに,噴出速度が音速を超えると噴煙内部に衝撃波構造が形成され,噴煙は大気を混合しにくい噴水構造をつくり,先行研究で示されたよりも火砕流が発生しやすいことを定量的に初めて示すことができた.
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