研究課題
本研究は、2005年夏に米国南部で発生した大規模ハリケーン災害に関する環境影響の総合的把握と、災害に由来する環境問題への政治的社会的対応について、特に人種関係に留意しつつ明らかにすることを目的としている。対象事例であるハリケーン・カトリーナ災害においては、大都市ニューオリンズの甚大な被害が注目されたが、その被害拡大の背景には、1物理的な脆弱性を持つ地域における堤防建設と都市開発の関係、2高潮・高波にたいして緩衝作用をもつ湿地破壊と運河建設の歴史などが指摘される。堤防構造上の欠陥という直接的な要因だけではなく、長期的な都市開発において、都市が持つ脆弱性がより高められた結果として、カトリーナ災害が発生したことには留意すべきであることを指摘した。実際に、災害後には湿地保全をめぐる大きな方針転換が行われており、この点は日本における防災体制への重要な示唆を含んでいると言えよう。ハリケーン・カトリーナは、工業地帯も含めて直撃しており、自然災害によって環境リスクの高い地域のリスクがさらに高まることが明らかになっている。また対象事例においては、石油化学工場周辺にはアフリカ系コミュニティがあるため、自然災害と環境正義との関係についても指摘した。さらに都市再生をめぐる方針、ならびに「ニューオリンズという都市像」をめぐって顕在化した、行政・都市計画家と住民(とくにアフリカ系住民)とのあいだにみられた意識の違いについて指摘し、そこから得られる教訓を指摘した論文を執筆した(現在、印刷中)。予定外であったが、研究機関の最終年度4月に、ハリケーン災害の被災地を含むメキシコ湾岸地帯においてアメリカ史上最大の石油流出事故が発生したため、復興途上にあった地域にこの流出事故かどのような影響をもたらしているのかについても研究を行った。
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Love, Vulnerability and Victimology
ページ: 7-19
環境社会学研究
巻: 16号 ページ: 19-32
http://info.ibaraki.ac.jp/scripts/websearch/index.htm