研究概要 |
本年度においては, ライフラインシステムの中でも首都圏に敷設されている電力, 都市ガス, 及び上下水道を取り上げ, これらのライフライン事業者に対するヒアリングや既往の文献・インターネット等による公開情報の収集により, 本対象システムをネットワークとしてデジタルモデリングし, 地震ハザードに応じたシステム信頼性の数値計算を実施した. その際には, 各ライフラインの構成要素をノード, それらの物理的連結性をリンクとして, それぞれ緯度・経度のデジタル値に変換した上で, 個々のライフラインごとに主要施設の位置とそれらの物理的連結性をネットワークとしてモデル化した. 信頼性計算に当たっては, Binary Decision Diagram法を修正適用して, ノードとリンクの故障率を所与の一定値とした場合のノード故障数とリンク故障数の変化に対するシステム信頼性の変化を数値試行実験により明らかにした. 地震ハザードとしては首都直下地震を想定し, その空間情報を参照し, 地震ハザードの高い位置に位置するノードやリンクの故障率を相対的に高めてシステム信頼性の変化を計算し, 全体ネットワークの地震ハザードに対する特徴を抽出した. 以上の結果, 電力依存性や水処理依存性を評価可能なライフラインデジタルネットワークのプロトタイプモデルを構築することができ, 1) 電力, ガス, 下水の順番でリンク故障に起因するネットワーク損傷に対して耐性があること, 2) ガスネットワークには連結性を大きく低下させるノード故障パターンが存在すること, 3) 下水ネットワークは環状の繋がりが少なく, ノード故障の割合以上に連結性が低下してしまう場合があること, 4) 上下水道網に多数のリンクを有する電力ネットワークのノード故障がシステム信頼性に大きな影響を及ぼすこと等, を定量的に明らかにすることができた.
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