研究概要 |
本研究の目的は, 想定首都直下地震を対象として, 市街地復興のシナリオに応じた住宅再建状況の想定を実現することである. 研究期間内に, 代表的な市街地復興シナリオの抽出と描画, 記述した市街地復興状況に応じた住宅再建行動モデルの構築と予測試行を計画している. 2008年度は, 東京大学・埼玉県の共同研究(震災を想定した県土事前復興プログラム)や, 文科省首都直下地震防災・減災特別プロジェクトに参画し, 神戸市役所や兵庫県庁へのヒヤリングや現地視察, 関係者との意見交換等を参考にしつつ, 既往研究等を整理し, 大きく5つの市街地復興シナリオ(神戸型の市街地再開発シナリオ/土地区画整理シナリオ/まちづくりシナリオ/自主再建シナリオ, 中越型の集団移転シナリオ)を抽出した. 次年度は, 想定首都直下地震における5つのシナリオの組合せの設定を検討し, ややマクロに具体的なデータセットの作業を行いたい. 住宅再建行動モデルについては, 2008年度に文科省特別教育研究経費(首都圏大震災軽減のための実践的都市地震工学の展開)の研究資金も利用して, 1都3県全域を対象とした「想定首都地震の住宅対応に関する意向調査」を実施し, 4200サンプルを回収した. 収集データから非集計行動モデルの推定をしており, 概ね完了した. 市街地復興と個々人の住宅再建行動の関係性について, 実施調査では, 現住地での移住率という指標を用いてその関係性を捉えることに試みたが, 調査結果への影響は十分に確認されず, 仮想的な意識調査から帰納的に求めることの限界性も示唆された. 次年度は, 市街地復興と個々人の住宅再建行動の関係性について, シミュレーションフローの設計により演繹的に検討しながら, 具体的なシナリオやデータも投入し, 市街地復興のシナリオに応じた住宅再建状況想定の試行に繋げたい.
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