本年度は、前年度の研究の検証を行いながら、抽出・構築された尺度をもとに実施した社会調査について、(1)災害被災者への質問紙・インタビュー調査から得られた結果をもとに生活再建過程および評価尺度の検証と一般性の導出を行う、(2)検証によって一般性が認められる尺度について体系化を行い「標準的な被災者の生活再建指標」を提案する、という2点に重点を置いた研究を行った。 具体的には1995年阪神・淡路大震災、2004年新潟県中越地震、2007年新潟県中越沖地震の3つの地震被災者の調査データから明らかになった生活再建過程と、1995年阪神・淡路大震災の生活再建過程との比較検討を行うことで、生活再建過程の普遍性・再現性について、特にその中核的課題である「すまい」「人と人のつながり」「被災者・被災地全体の生活再建過程」「自助・共助・公助による効果的防災のための役割分担」について比較し、その特殊性・一般性について論じた。 すまいについては、断続的な余震が人々の避難と居住地選択行動に大きな影響を与えていたこと、血縁が集住する地域では血縁宅が避難先にはならないこと、それ以外の全体的傾向には一般性があることがわかった。つながりについては、大都市部では血縁とライフライン事業者では支援者となり公助はセーフティーネットであること、中山間地・地方都市では、近所・町内会・地元自治体が支援者として評価されていることがわかった。 全体的な生活再建過程については、災害の規模や様相が違っても、復旧・復興過程には一般性が見られることがわかった。時期をみると、中越沖地震では阪神・淡路大震災よりも急速に復旧・復興していることがわかった。 自助・共助・公助の役割分担については、阪神・淡路大震災、中越地震、中越沖地震のどの被災者においても、自助・共助・公助の効果的な防災行動の役割分担について一般性が見られた。
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