並列化計算が可能なLinux OSサーバーに、メソスケール気象モデルWRF(Weather Research and Forecasting model)と第3世代浅海波浪推算モデルSWAN(Simulating WAves Nearshore)をセットアップし、連携計算ができるシステムを構築した。全球気象予報モデルGFS(Global Forecast System)の計算結果データを自動的にダウンロードし、WRFにより対象領域の気象予報計算を行い、さらに、WRFによる風場の計算結果を用いてSWANによって波浪を算定する、という一連の作業を自動化できるシェルスクリプトを作成した。また、GFSから風速だけでなく気圧も取り出すシェルスクリプトを作成し、高波計算のみでなく、高潮計算で必要となる外力を気象データから与えることを可能にした。加えて、GFSやWRFの風と気圧をグラフ化するシェルスクリプトを作成し、与える外力の空間分布や時系列を容易にチェックできるようにした。 気象予報データの代わりに客観解析データを用いて、災害時の気象・波浪・高潮追算ができるようにもシステムを改良した。この波浪追算システムを用いて、2008年2月に北陸沿岸および富山湾で発生した寄り回り波による高波災害の推算を行い、災害時の波浪状況を精度よく再現するとともに、伏木富山港で発生した防波堤滑動被災について、被害が発生するのに相当する高波浪が発生していたという結果を得た。 メソスケール領域に対して、毎時大気解析GPVという気象庁より1時間毎に配信される高解像度な風データを用いることで、風場と波浪場の現況をリアルタイムに把握できるシステムの構築も試みた。 潮汐・波浪・高潮結合モデル(Surge-WAve-Tide Coupled Model)を用いて、GFSおよびWRFを援用した高潮解析を、瀬戸内海を対象に実施した。2次元台風モデルよりも気象モデルを援用した方が高潮の再現精度の向上が期待できる結果となったが、潮汐の再現性やメソ気象モデルWRFのセッティングなど、さらなる検討課題がみえた。
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