本研究の目的は、日本全国から収集した胞状奇胎と呼ばれる特殊な検体を用いて、日本人ゲノム中に存在している未知のゲノム構造多型を効率的に検出し、将来の遺伝学的解析の精度を向上させるための基盤情報構築を目的とする。今年度は、昨年度より検討してきた、日本人集団の確定ハプロタイプ構造を用いたゲノム構造多型検出法の確立と、確定ハプロタイプ情報の応用法について解析を行い、以下の成果を得た。 1. 確定、及び、推定ハプロタイプ、それぞれから算出した連鎖不平衡係数は近距離においてはほぼ等しいが、長距離におけるその係数の精度は減少することを示した。従って、連鎖不平衡度の算出精度に関して、推定作業を要しない確定ハプロタイプ情報を適用することの有用性が示唆された。 2. 確定ハプロタイプ情報に基づく独自の統計的指標を確立し、日本人におけるより正確な自然選択候補領域を検出し、カタログ化した。既知の領域との詳細な比較解析により、これらの領域には、推定ハプロタイプからでは検出の困難であった新規の構造多型領域が含まれていることが示唆された。 3. 今回同定した確定ハプロタイプ情報を、ハプロタイプを推定する際の参照配列として用いることにより、推定ハプロタイプの精度が向上することを示した。 これらの結果は、50万個という詳細なハプロタイピングを行うことにより明らかとなった、確定ハプロタイプの重要な利点である。今回決定した確定ハプロタイプデータは、有用なリソースとしてデータベース化し、解析結果は、国際オンラインジャーナル誌PLoS Geneticsに発表した。
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