研究概要 |
動物では転写型のレトロコピーが遺伝子発現制御など重要な役割を果たすことが知られているが、植物では、網羅的な実験検証や他の植物種との比較ゲノム解析によるレトロコピーの役割の解明はなされていない。そこで、イネゲノム内で、RNA遺伝子やタンパク質コード遺伝子として機能する転写型レトロコピーを網羅的に同定するため、まずジャポニカ種の完全長cDNA配列を日本晴ゲノム配列にマッピングし、ORFを予測した。予測されたORFの内、ゲノム上でイドトロンを持ち、ORFが開始コドンから終止コドンまで予測された遺伝子座を親遺伝子とした。親遺伝子のアミノ酸配列をTBLASTNにより日本晴ゲノムにマッピングし、親遺伝子のイントロンを全て欠失したヒット領域をレトロコピーとした結果、13,959の親遺伝子座から、3,335遺伝子座のレトロコピーを同定することができた。また、親遺伝子のアミノ酸配列とレトロコピーの塩基配列のTFASTY解析の結果、親遺伝子の開始コドン、終止コドンまでが保存され、途中にフレームシフトもナンセンス変異を含まないものが60遺伝子座見つかった。これらは、タンパク質をコードした転写型レトロコピーである可能性が示唆される。 21年度は、転写型レトロコピーの候補について、親遺伝子と合わせて、イネの複数組織から抽出したmRNAサンプルに対してRT-PCRによる発現解析を行う。また、シロイヌナズナやソルガムなど、ゲノム配列が決定されている他の植物種との比較ゲノム解析を行い、イネに特異的なレトロコピー、あるいは植物種に広く保存されているレトロコピーの同定を行う。
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