前年度までに、ES細胞において機能を阻害するとES細胞が始原生殖細胞様の細胞へと変化するような遺伝子を網羅的RNAiによりスクリーニングする系を立ち上げ、パイロットスクリーニングで5つの候補遺伝子を見つけた。本年度はそれらの遺伝子の詳しい解析をさらに進めた。スクリーニング系では生殖系列特異的に発現する遺伝子Ddx4の上流配列にRFPをつなげたリポーターを有するES細胞を利用していたが、YFP系の蛍光タンパク質であるVenusをリポーターに持つ別のES細胞でも同様の現象が再現されることを確認した。それぞれの遺伝子について、ES細胞に対して機能阻害すると内在性Ddx4やその他の後期始原生殖細胞のマーカーの発現が大幅に上昇することを確認した。また、一部の遺伝子については、減数分裂初期のマーカーについても発現が上昇していることがわかった。さらに、もっともRFP蛍光強度の上昇が高かった遺伝子については、減数分裂マーカーの核内における局在変化が見られたことから、減数分裂へと移行しつつある可能性も示唆された。また、複数の遺伝子をES細胞に対して同時に機能阻害すると、単独の場合よりもRFP蛍光強度がさらに上昇することから、ES細胞から始原生殖細胞へと変化する過程には複数の経路が関わっている可能性も示唆された。このRFP陽性となった細胞か実際に生殖細胞として機能できるかどうかを検証するため、セルソーターで分取した陽性細胞を無精子症マウスの精細管へ移植して精子形成に寄与できるかどうかを確かめる実験を開始し、現在も遂行中である。
|