・UPATrap型ベクターを用いたランダムな遺伝子トラップにより、変異体ES細胞クローン数を増加させた後(>1000)、3'RACE法により挿入部位の特定を行った。新しく挿入部位が特定された約300クローンから得られた3'RACE増幅断片の配列に関して、公共データベースを用いた性検索を行い、未知遺伝子の候補配列を選別した結果、63の未知遺伝子の候補配列がトラップされていることが確認された。これらの未知遺伝子の候補配列に関して種問の保存性を調べた結果、19クローンに関して顕著な相同性が認めうれ、機能的な配列も含んでいる可能性が示唆された。また、RT-PCR等の手法により発現解析を行った結果、これらの候補配列に組織特異的な発現を示す未知遺伝子が含まれていることが確認された。 ・これまでは、UPATrap法に基づいたレトロウイルス型のベクターにより遺伝子トラップを行ってきたが、トラップされた遺伝子の約80%はこれまでに報告されている既知遺伝子配列に一致し、未知遺伝子の探索という本研究の目的上、非常に低効率であることが判明した。この現象は、発現の強い遺伝子に挿入されやすい傾向を持つレトロウイルスの性質が反映されている可能性が疑われた。そこで、DNAトランスポゾンTo12に基づくトランスポゾンの改良型ベクターを用いて遺伝子トラップ実験を行ったところ、未知遺伝子の候補配列がトラップされたクローンの割合が36%に達することが明らかになり、レトロウイルス型ベクターの結果(約20%)と比較して、大幅な増加が観察された。現在はこれらの未知遺伝子の候補配列め解析を続けている。
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