研究概要 |
レトロウイルス型遺伝子トラップベクター、あるいはメダカTol2トランスポゾン由来のDNAトランスポゾソ型遺伝子トラップベクターを用いて、UPATrap法に基づいた遺伝子トラップを行い、未知遺伝子の探索・解析を試みた。これらの遺伝子トラップベクターは、遺伝子発現の有無に関わらずランダムに遺伝子を破壊することが可能である。この手法により作製された多数の変異体ES細胞クローン中のトラップベクター挿入部位の解析を行った。3'RACE法により、トラップされた遺伝子/遺伝子候補のcDNAを増幅し、塩基配列を解読した後、公共データベース(NCBI GenBank, UCSC genome browger)に対する相同性検索を行った。その結果、約31%のクローンにおいて、登録されているいかなる遺伝子配列とも一致しない未知遺伝子の候補配列がトラップされていることが判明した。また、3'RACEで増幅されたcDNA配列とゲノム配列を比較した結果、未知遺伝子候補cDNAの約15%がエクソン-イントロン構造を持ちスプライシングを受けていることが明らかになった。これらの候補配列の中から、機能的に重要な未知遺伝子を発掘するため、生物種間における塩基配列上の保存性の有無を検証した。未知遺伝子候補配列中でヒトゲノムトの塩某配列と高い保存性を示すものは約19%であったが、open reading frame(ORF)あるいはアミノ酸配列レベルでの保存性が見出される例は非常に少なかった。しかし、RT-PCR等による発現解析の結果、遺伝子トラップにより得られた未知遺伝子の候補配列中で、実際に組織特異的発現を示す遺伝子が複数存存することが確認されており、アミノ酸レベルでの保存性が見出されないcDNA配列中に、non-coding RNAとして機能する未知遺伝子が含まれる可能性が示唆された。
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