本研究の目的は、申請者らが開発したin vitro virus(IVV)法を応用して、タンパク質のアルギニン残基にメチル基を転移する、アルギニンメチル化酵素群(PRMTs:Protein arginine methy ltransferases)の標的タンパク質を網羅的に探索する技術を開発することである。現在、哺乳類では11種類のPRMT遺伝子が発見されており、いずれの翻訳産物もS-adenosylmethionineをメチル基ドナーとし、標的タンパク質をメチル化修飾することが明らかであるが、その標的特異性は様々である。アルギニンメチル化の細胞内プロセスにおける役割を包括的に解析し、システム生物学研究に適用しうるデータを得るためには、PRMTs標的タンパク質の網羅的な同定および認識モチーフの決定が必須である。そこで、本研究ではその解析ための技術基盤を開発するとともに、いくつかのPRMTについて実際に網羅的解析データの取得を試みている。平成21年度は、全体の計画のなかで以下の成果を得ることができた。(1)代表的なアルギニンメチル化酵素であるPRMT1による基質タンパク質群の効率的な試験管内メチル化の条件決定、(2)mRNA-タンパク質連結分子の試験管内メチル化条件の決定、(3)モデル系によるPRMT1標的タンパク質のIVV法による特異的選択の成功。今後は、本研究による決定された条件を用い、cDNAライブラリーからの標的スクリーニングを行い、網羅的なPRMT1基質の同定を行う。また、他のアルギニンメチル化酵素についても、順次解析を進めるものとする。
|