研究概要 |
(研究目的)産業微生物であるS. avermitilisのゲノム再編成により構築したSUKA株の種々の化合物に対する物質生産性試験を行い、その有用性を立証する。前年度において、SUKA5がアミノグリコシドやポリケチド化合物に対する十分な生産能力を有していることを示した。本年度においては、更にアミノグリコシド化合物(ribostamycin)、ポリケチド化合物(oxytetracycline)、ペプチド化合物(echinomycin)、インドロカルバゾール化合物(rebeccamycin)、βラクタム化合物(cephamycin)、テルペン化合物(cyslabdan)についてSUKU5ならびにSUKA17を宿主としてその生産性試験を行った。(結果) Ribostamycin, oxytetracycline, rebeccamycin, cephamycin, cylabdanにおいて各生合成遺伝子クラスターの導入のみでその生産が確認された。生合成遺伝子の供給元の微生物を超える充分な生産性を示したものは、cephamycinのみであったが、本来の生産菌の2倍程度(0.2mg/mL)の顕著に高い生産性を示した。一方、echinomycinに至っては、生産は全く観察されなかった。生産性が低いものの内、cyslabdanに関しては、その生合成遺伝子全体を制御するプロモーターをS.avermitilisで利用可能な構成的強発現プロモーターに置換することによって、本来の生産菌の生産量(0.001g/L程度)の200倍と著量のcyslabdanを菌体内に蓄積した。(意義・重要性)本研究において、我々が開発した、S.avermitilis SUKAは種々の異種微生物由来の有用物質の生産に充分に応用できることが示された。また、生産性が低いあるいは全く観察できない場合においても、プロモーター置換等の遺伝子工学的手法を用いることにより、生産性を改善することが充分に可能であり、また、その生産量は本来の生産菌を超える顕著に高い生産能力を保持していることが改めて示された。この様に生産性が低い化合物に対してSUKAを異種発現宿主として利用すれば、充分な生産性を確保することができる。さらに未知化合物等に応用することによりその生合成研究にも利用することが可能である。SUKAは今後の医薬品開発等における強力なツールとして利用することが期待できる。
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