本年度は、研究代表者が開発した人工miRNA前駆体の二次構造を最適化し、その制御システムを細胞レベルにて解明することを目的として、以下の研究を行った。 1. 人工miRNA前駆体の二本鎖領域内の様々な部位に2塩基のミスマッチを導入した人工miRNA前駆体を設計し、その各々の発現ベクターを構築した。これらのmiRNA発現ベクターをHEK-293細胞ヘリポフェクション法にて導入し、レポーター遺伝子の発現の解析を行った。抑制効果について評価した結果、2塩基のミスマッチ部位の変化に伴う抑制効果の大きな変化は観察されなかったため、2塩基のミスマッチではRISCへの取り込み効率の改善には不十分であることが示唆された。現在、miRNA前駆体の二次構造をさらに大きく変化させる変異体を作成し、抑制効果について解析を行っている。 2. Drosha複合体による人工miRNA前駆体の認識にはステム・ループ構造および隣接した非構造領域が必要である。 研究代表者は2つの異なる人工miRNAを連結した人工miRNAクラスターを作成し、miRNA間の距離を様々に変化させ、各miRNAの発現量をNorthern blot解析にて定量した。その結果、介在配列の長さに依存した各miRNAの発現量の変化が見られた。このことはDrosha複合体によるmiRNA前駆体の認識に非構造領域が重要であることを示しており、今後、効率的にmiRNAを発現させる際には必ず考慮しなければならない重要な知見である(現在、論文執筆中)。
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