細胞の死は我々生体の維持に必要不可欠な現象として盛んに研究され、中でもアポトーシスは生理的な細胞死の代表としてその詳細なメカニズムが明らかとされている。一方で近年、アポトーシスとは異なる細胞死(非アポトーシス型細胞死)の存在が明らかになっており、そのメカニズムの解明が細胞死研究において次なる課題として注目されている。そこで本研究では、様々な細胞死を制御(誘導ないしは抑制)する化合物を開発し、これを用いることで細胞死のメカニズムを分子レベルで明らかにすることを目的とする。今年度は今後の研究基盤を築くことを目的として、まず細胞死制御分子を探索する系の構築からとりかかった。種々の条件検討の結果ヒト白血病細胞HL-60において、様々な細胞死刺激で典型的なアポトーシスが誘導される一方で、種々のカスパーゼ阻害剤(アポトーシスを抑制する)存在下では非アポトーシス型細胞死が誘導されることを見出した。さらに、この実験系を用いることで緑茶カテキン類縁化合物が小胞体ストレスにより細胞死を誘導することを明らかにすると共に、カスパーゼ非依存的にネクローシス様の細胞死を誘導する化合物群を見出すことにも成功した。さらに、ネクローシス様の細胞死を誘導する化合物に関しては構造展開を行うことで、より高活性な誘導体を得ることにも成功した。今後はこれら化合物のプローブ化を経て、本細胞死の詳細な分子メカニズムを明らかにすることを計画している。
|