研究提案「In vivoセレクション法によるゲノムワイドなリボザイム探索」では、機能性RNAのうち自己切断型リボザイムの探索を目標に設定し、ゲノムから転写されるRNAを網羅的にライブラリー化した「ゲノムRNAライブラリー」から、大腸菌を用いたin vivoセレクション法による効率的なスクリーニング系を用いて新規リボザイムの探索と機能解明を行う。ゲノム中にコードされたリボザイムは、RNAレベルにおける遺伝子発現制御、オルタナティブスプライシングなど重要な生物学的機能を持つと考えられるが、新規なリボザイムを探索する方法論はこれまであまり研究されてこなかった。リボザイムをはじめとして、生物学的に重要な意味を持つ新たな機能性RNAの研究は、基礎研究、医療、診断など、生命科学における広い領域において重要なものとなる。 これまでに、大腸菌、枯草菌、ヒト、酵母などのゲノムからゲノムRNAライブラリーを作製し、in vivoセレクションの実験系の立ち上げを行った。各種ゲノムを調整した後、ゲノムをDNA分解酵素(DNaseI)でゲノムDNAを部分消化した後、目的とする塩基長のDNAをゲル電気泳動法により分離してゲノムライブラリーを作製した。ライブラリーの塩基長はDNaseIの反応時間により自由に制御可能であることが確認できたことから、100-200塩基長のゲノムライブラリーの作製を行った。作製したゲノムライブラリーを使用して、in vitroセレクション法を行ったところ、目的としたリボザイムの獲得までにはいたらなかったが、誘起小分子化合物に対して、選択的に結合するRNAを獲得出来たことから、ゲノムライブラリーを利用したセレクション法の有用性が明らかになった。セレクションにより得られた配列は、タンパク質をコードする領域に存在しており、小分子を利用した新たな遺伝子発現制御の可能性を提示するものであった。
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