細胞分裂のM期特異的に機能するモータータンパク質[Eg5]は、そのM期特異性から、細胞周期進行を阻害する低分子化合物の標的分子として注目され、複数の天然・合成化合物が発見・同定されているが、詳細な阻害の分子機構はいまだ不明である。そこで本研究では、本年度において、ATP駆動性の分子モーターEg5の基本的運動能の解明を試み、複数のEg5のモータードメインが協同して力を発生し微小管を滑り運動させる際に、微小管を回転をもさせることを世界で始めて見出し、そのコークスクリュー様の運動を顕微鏡下で直接可視化することに成功した。 Eg5分子による微小管の滑り回転運動の様子をイメージングした顕微鏡システムは、特殊なプリズムを通して撮影された一枚のビデオ画像から、対象となる物体の位置情報を3次元的に時間とともに追跡でき、原理的に単純で画期的な顕微鏡システムである。本年度は特に以下の点で改良を行った。1)光源を小さなマーカー(Qdot)の励起により有効なキセノンランプに変えた。これによりプローブの光強度を増し、かつ、安定性・再現性を高めた。2)励起光をファイバーから照射した。これによりノイズとなるレーザー本体を除振台から取り除き、位置精度を増す。3)ステージのz方向のドリフトを取り除くためにperfect focus system(ニコン社)を導入し、z方向のナノメートル計測を長時間可能とした。本研究において改良された3次元位置検出顕微鏡システムは、微小管の回転運動の観察により、ナノメートルの精度で3次元測定できることが実証され、さまざまな分子の3次元運動のイメージングに有効であると考えられる。
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