オニヒトテの一種から単離され、神経突起伸長作用を有するカングリオシドAG2作用機構の解明に向けて研究を行っている。本年度はシアル酸とガラクトースの結合反応に関して、昨年ど開発した3環型の新規供与体と様々な基質に対しての反応を検討した。その結果、本供与体が一般的なシアル酸含有糖鎖合成にも広く応用可能である事を示す事ができた。グリコール酸を含むシアル酸分子種に関しても効率的な糖鎖結合生成反応を開発した。このグリコール酸型シアル酸は、一般的なシアル酸種の一つであるが人手が難しい事などからその生理機能に関する研究がたち遅れている。今回開発した反応は菌類やヒトデ類から哺乳動物を幅広い生物種に存在するグリコリル型シアル酸含有糖鎖の化学合成に適用可能である。また昨年度に化学合成に成功したヒトデガングリオシドAG2五糖部分を数十ミリグラムスケールで化学合成し、ヒトSiglec-2とマウスSiglec-2に対して結合親和性をNMRを用いて調べた。Siglecは哺乳勤物のシアル酸認識タンパク質であり、Sigler-2特にB細胞表層に多く発現して免疫機能の調節やシグナル伝達機構に関与している事が知られている。さらに近年は新規の薬剤ターゲットタンパク質としてその機能調節化合物の探密が開始されつつある。NMRによる結合実験の結果、化字合成したAG2五糖はヒトSiglec-2に対し結合する事を明らかにした。一方マウスSiglec-2に対してはその結合が観測できなかった。来年度はこのヒトSiglec-2とAG2五糖の結合に関してさらに詳細な結合実験を行ない、その結合様式を明らかにする。
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