本研究課題は、UBL-UBA型ユビキチンレセプターに対する特異的阻害剤を開発し、それをツールとしてUBL-UBA型ユビキチンレセプターのユビキチン・プロテアソームシステムにおける役割を明らかにすること、またUBL-UBA型ユビキチンレセプター阻害剤の抗癌剤としての有用性を検証することを目的としている。今年度は、昨年度の研究で見出したUbiquilin 1相互作用化合物GUT-70を中心に解析を行った。 HeLa細胞を用いた薬剤プロテオーム解析を行った結果、GUT-70はプロテアソーム阻害剤(MG-132)やHsp90阻害剤(Geldanamycin、 Radicicol)に似たタンパク質発現変動プロファイルを示した。GUT-70はユビキチン化タンパク質の蓄積を誘導するだけでなく、Hsp90クライアントタンパク質(CDK4など)の発現を低下させることがわかった。そこで、RNAi法でHeLa細胞のUbiquilin 1をノックダウンしたところ、顕著な増殖阻害とともにCDK4の発現低下が誘導された。これらのことから、Ubiquilin 1は細胞生存に不可欠であり、またHsp90クライアントタンパク質の発現制御に深く関わっていることが示唆された。 GUT-70のin vivoにおける抗腫瘍活性を調べるために種々の検討をした結果、GUT-70は難水溶性のため動物への投与実験が困難であることがわかった。そこで、分子モデリング手法によって選択したおよそ150種類のGUT-70関連化合物について、細胞増殖阻害活性を評価した。その結果、GUT-70よりも強い増殖阻害活性を示す化合物はなかったが、GUT-70よりも疎水性が低く水に対する溶解度が高い計算値を示す化合物をいくつか見出すことに成功した。
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