研究概要 |
申請者のグループで開発された人工塩基対システムを利用して、転写により種々の塩基類似体を位置選択的に組み込んだshRNAなどを培養細胞に導入し、その効果と機能を解析して人工塩基が細胞内でどのように認識されるかを調べることを目的とし、その実験系を確立すること、そしてさらなる新規機能性RNAの創出を目指した。 本年度は、前年度に確立した疎水性の人工塩基を含むshRNAの調製法、ならびにそのshRNAの効果を解析した結果を踏まえ、shRNA中で特定の位置に種々の人工塩基(s、ss、Dss、Pa、Pa誘導体)を導入した効果をさらに詳細に調べた。その結果、天然型のミスマッチの変異が許容されてshRNAの活性が保持されていたガイド鎖の特定の領域では、人工塩基Paに結合した置換基部分が大きくなるほどshRNAの活性が弱くなることがわかった。具体的には、蛍光標識で多用されるフルオレセイン基がリンカーを介して結合したPa誘導体ではshRNAの活性はなくなってしまうが、フルオレセイン部分がビオチン、アミノ基といった小さな置換基となるほど活性は回復し、ビチオフェンが結合した蛍光性人工塩基(Dssやss)ではshRNAの活性は損なわれなかった。また、Dssを位置選択的に含むshRNAが導入された細胞では、人工塩基由来の蛍光を顕微鏡で観察することができた。さらに、二つの疎水性人工塩基対Ds-Px, Ds-Paを組み合わせたPCR・転写の人工塩基対システムを利用することにより、人工塩基を位置選択的に含むRNAの調製法を確立した。具体的には、疎水性の人工塩基対Ds-Pxを用いた30サイクルのPCRで増幅されたDsを含むDNA断片を調製し、これを鋳型とした転写により、Pa誘導体を位置選択的にRNA中に導入が可能であることを示した。
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