デラマコットの塩場ごとのオランウータンの行動 デラマコット4ヵ所(KK、KM17、KM29、TD)の塩場を対象としてオランウータンの訪問頻度を比較した結果、KKが他の塩場と比べて有意に高い訪問頻度を示した(p<0.01)。現在、新たな塩場(TJ)からもデータを取得中であり、KK同様に他の塩場と比較してナトリウム濃度が低いにも関わらず訪問頻度は非常に高いことが分かってきている。これらのことは、ナトリウム濃度以外の要因の影響も受けていることを示唆しており、塩場に着目して保護区を設置する際は、化学組成に関わらず選定することが重要である。オランウータンによる塩場利用は複数個体によって行われており、子連れの繁殖個体も多く確認されている。このような利用実態は、センサーカメラのモニタリングによってはじめて判明することであり、本法のマニュアル化を来年度の課題の一つとしたい。 比較調査地マルアでの塩場訪問種の把握 これまでに4ヵ所の塩場を訪問した上位5種は、上位からアジアゾウ、サンバー、ヒゲイノシシ、オランウータン、ホエジカの順であった。オランウータンの塩場訪問が相対的に高いことから、本行動は地域性にとらわれない普遍的なものであることを確認した。 まとめ 以上、1)オランウータンはナトリウム濃度が高くない塩場を高頻度で利用することから、湧水の化学組成以外の要因の重要性、2)子連れメスが高頻度で利用することから、単独性が高いオランウータンにとって、塩場周辺は他個体と接近する場所(繁殖など)としての重要性を持つこと、そして3)他地域でもオランウータンは塩場を高頻度で利用することから、塩場周辺を保護区に指定する必要性が高く、カメラトラップによるモニタリング手法のマニュアル化が重要であることを示した。また、森林局スタッフに対してカメラトラップによるモニタリング手法のセミナーを開き、普及活動を行った。
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