研究課題
デラマコット商業林におけるオランウータンの塩場利用とその生息地保全マレーシア・サバ州のデラマコット商業林にある塩場の中から、環境が異なる4ヵ所の塩場を対象として、代表的な樹上性種であるオランウータンならびに代表的な地上性種である大型のシカのサンバーとヒゲイノシシの訪問頻度を比較した。その結果、サンバーとヒゲイノシシは塩濃度が高い塩場を高い頻度で訪問するのに対し、オランウータンは塩濃度よりも道路や村といった人為的な影響の低い塩場をより高い頻度で訪問していることが明らかになった。また、オランウータンの塩場利用について、訪問個体を優位オス、子連れメス、その他の3つのクラスに分けて調べたところ、優位オスは31%、子連れメスは17%、そしてその他は52%であった。この結果は、比較的警戒心が低く地上移動の多い優位オスに偏るという予想に大きく反し、全てのクラスにとって塩場が重要であること、塩場は樹上性オランウータンの地上モニタリングサイトとして有効であることが分かった。2008年サバ州森林局は、デラマコット商業林において塩場の重点保護区化を森林管理政策に採用した。今回の調査から、オランウータンの保全を考慮する場合は、塩場の重点保護区化に加えて、塩場周辺にバッファーゾーンを設置する必要性、具体的には木材の搬出路を塩場から極力離して設置する、あるいは重点保護区周辺は伐採本数を少なくするなどを提案した。
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Raffles Bulletin of Zoology
巻: 59(1) ページ: 109-115
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