研究概要 |
GPSを用いた現地踏査、聞き取り調査、植生調査と中解像度の衛星画像(Landsat,JERS)を用いたリモートセンシングによって、カレンによる伝統的な焼畑耕作が長期にわたり営まれてきたミャンマー・バゴー山地のS村周辺の土地被覆の長期的変化を解析した。 S村では集落中心から約1km以内は村落共有林として保全され、集落中心から1-4kmのエリアで高頻度に焼畑が営まれていることがわかった。このエリアでは、休閑期間12年程度で焼畑が開かれており、タケが優占する休閑林が卓越している。現地観察や先行研究によれば、集落周辺の休閑林にはチークの生育がほとんど認められないことが確認されており、高頻度の火入れの繰り返しによって、休閑地の植生はチークに比べて耐火性の高いピンカド(Xylia xylocarpa)などの樹種に置き換わっていった可能性が示唆された。一方、集落中心から4km以上離れたエリアでは、焼畑の頻度が低いため、木本が優占する休閑期の比較的長い休閑林が形成されており、過去20年間で焼畑に使用されてこなかった森林の割合も高かった。 長期に及ぶ焼畑耕作の結果、かつてのチーク天然林は姿を変え、木本の優占する植生の一部はタケの優占する植生へと変化したものと思われるが、様々な遷移段階の休閑林の存在は種の多様性を高める役割を果たしており、休閑林からの有用植物の採取も認められている。また、タケを伐開する焼畑は休閑期の早期の植生回復を促しており、植生回復の観点からも非常に合理的である。2001年以降は木本が優占する群落の減少は認められなかったことから、現在のS村周辺の森林植生は伐採と回復がほぼ均衡した状態にある可能性が高いといえる。
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