インドネシアのイスラーム主義武装闘争派であるジャマーア・イスラミヤ(JI)やイデオロギー的な急進派である解放党を中心に、活動家や彼らの事情に詳しい地元ジャーナリスト、知識人からの聞き取りにより、JIや解放党の活動の具体的内容とその展開を明らかにした。JIは新組織としてジャマーア・アンソール・タウヒード(JAT)を結成し、出獄者を含むこれまでのメンバーの再組織化ととりわけ地方都市におけるリクルート活動を行っている。JATは比較的穏健な宣教によるイデオロギーと組織の拡大を目指しているが、根本となる思想は変わってない。JIはその岐路に立っており、今後も継続調査が必要である。 インドネシア政治の文脈では、2009年4月に行われた総選挙と7月の大統領選挙がもっぱらの政治課題である。JIや解放党のような急進派の反応について聞き取りを行うとともに、唯一総選挙に参加しているイスラーム主義政党である福祉正義党の動向調査も行っている。福祉正義党は過去5年間、地方首長選挙において世俗的ナショナリスト政党とも手を組み、選挙前にはナショナリスト的なテレビCMを放映するなど、中道路線に向かっている。急進派とも距離を取っており、急進派は福祉正義党よりも政府や国軍との関係やロビーをより重視しているようである。 イスラーム政治運動のイデオロギーやその国際的な影響については、直接的なインタビューだけでなく、参与観察や出版物の収集と分析を通じて、その内容と展開を読み解いている。
|