研究概要 |
これまでに実施したカメルーン東南部におけるフィールドワークにもとづき、バカ・ピグミーの森林資源利用と、その資源のアベイラビリティ(利用可能性)、および地域の森林景観との相互作用についての研究成果をまとめた。その結果はカナダで開催された第12回国際民族生物学会にて"Semi- domesticated yams (Dioscorea spp.) in an ational park, southeastern Cameroon"との演題にて報告するとともに、これまでの研究成果とあわせて『バカ・ピグミーの生態人類学-アフリカ熱帯雨林の狩猟採集生活の再検討』と題する図書を執筆・刊行した。また関連する論文が二つの英文学術図書、Human Ecology : Contemporary Research and Practice (Daniel S. Bates et al. eds.)およびInformation and Its Role in Hunter-Gatherer Bands (Robert Whallon et al. eds.)に採録され、刊行された。これらの研究成果をまとめる過程であきらかになった今後の研究を要する点として、以下の3点をあげることができる。第一に、資源利用と森林景観との相互作用を解明するためには、複数の時間軸および空間スケールのもとでその相互作用およびその歴史を把握し記述するための新しいモデルが必要となること。第二に、現在、当該地域にてさかんにすすめられている自然保護計画において、住民の生活と森林保全の両立を達成するために、上記のような人びとの資源利用と生活環境との相互作用の総体にかんする理解を、どのように有効に活用できるか、という研究の応用面における課題。第三に、おなじ地域に住んでいる狩猟採集民と農耕民の資源利用における差異を、自然保護計画にどのように反映することができるのか、という問題である。つまり人びとの多様性をふまえたうえで、森林保全と住民の生活と文化との折り合いをつけるためには、両者の資源利用の様態および土地利用やその権利のあり方がどのように異なっているかについて、さらに精緻な情報にもとづいて比較検討したうえで、両者におけるコンフリクトを調停するための枠組みを構築しなければならない。最終年度となる次年度には、これらの点について研究をすすめていく。
|