本研究の目的は、銀行事務職の実態調査にもとづき、女性労働者の多層性に光を当て、女性労働者の抱える困難と女性人材の育成に向けた課題を探るものである。そのため本年度は、第1に前年度に引き続き、関連する諸領域の先行研究のサーベイ、第2に金融機関への調査、第3に銀行事務職の実態調査を行った。以下、成果を具体的に記す。 1国内外のジェンダー研究、女性労働研究、ホワイトカラー研究の先行研究を整理分析し、近年取り組まれている研究テーマとその理論ならびに方法についてまとめた。 2金融機関の経営環境や経営戦略について、ディスクロージャー誌と金融専門誌をもとに整理した。これをもとに、調査対象としてメガバンク2行を選定した。そして人事部内における、女性行員の活躍を支援する専門部署を訪問し、担当者に聞き取り調査を行った。これによって、金融機関における女性人材の育成に向けた具体的取り組みについて把握することができた。 3機関調査を行ったメガバンクから1行を選定し、営業店における銀行事務職への聞き取り調査を行った。本研究の目的である女性労働者の多層性に光を当てるため、調査対象者の選定にあたっては、キャリア形成過程が異なるタイプの女性を確保できるよう留意した。これによって、来年度の原稿執筆に向けた調査データの多くを入手することができた。ただし当初予定していた非正規雇用者の実態調査については、調査対象行からの了解が得られず実施できなかったため、来年度への持ち越しとなった。
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