本研究では、北米と南米にみられる日系女性文化の形成とその変化の過程を比較研究し、そこに現れるジェンダーやエスニシティの特徴を明らかにしている。さらに、特に新しい世代の文化に注目することにより、表象性を用いた新たな文化表象形式に見られる特徴を明らかにしている。日系女性文化研究としては、アメリカを中心にした研究はこれまでにも見られたが、特に本研究では、北米のカナダや南米のブラジルにおける女性文化に注目している。ゆえに、本研究は、日系女性文化の研究に新たな視座をもたらすだけでなく、これまでに行われた研究と比較することで、日系女性文化の持つそれぞれの文化的特徴をより明らかにしていることに意義があると言える。また、近年では、日本に生まれ、外国に移住している女性たちの文学もまた新たな日系世代(「新一世」)の文化として注目されている。これらもまた、従来から見られている英語圏以外の文化圏でも見られるようになっており、その言語、滞在する文化圏は、ますます多様になってきている。本研究では、そうした、これまでとは異なる視座から、日本を考察している女性たちの文学を比較研究することにより、世界に広がる日本女性の文化的特徴とグローバル化時代のその新たな枠組みを示しており、このことは、日系文化研究のさらなる発展に大いに貢献するものであると言える。
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