ジェンダー視点に立った予算運営(gender responsive budgeting : GRB)について、平成21年度はアジア太平洋地域における実施動向を研究した。まず、同地域におけるジェンダー視点に立った予算運営の実施状況を調査した。インターネットやデータベースを利用して、文献の収集と解読を行った。また専門家へのインタビューを行い、文献では得られないGRB具体的な実施方法や実施上の課題について情報を得た。その上で、Sharp(2002)が提唱したGRBの3つ目標((1)ジェンダーに対する認識を高めること、(2)予算運営の透明性や説明責任を高めること、(3)ジェンダー平等を促進するために予算の優先順位や予算配分を変更すること)を分析枠組として、各国の取組を分類した。その結果、多くの国々で第1、2目標は達成したものの、第3目標の達成した国は無かった。また、GRBが国際協力のパイロットプロジェクトとして実施される場合が多く、プロジェクト終了後GRBが継続的に行われるケースは稀である。GRBを行うためのキャパシティービルディングの強化が今後の課題となっていた。 さらにGRBを教育政策に応用するための枠組について研究を行った。具体的にはUNESCOのグローバル・モニタリングリポートをもとに教育政策の評価指標をGRBに活用する試みを行った。これらの研究の成果はUNESCO Advocacy Breifとして出版される予定である。
|