本研究の目的は、高齢者福祉施設に従事するケアワーカー(介護職)に対する半構造化面接調査を通して、ケアワーカーのキャリア意識の性差を明らかにすることであった。調査データは内容分析法によって分析した。本研究は、介護職に至るまでの職業キャリアや介護労働への就労のきっかけ、仕事への向き合い方、専門職意識、将来のキャリア形成についての考えについて、男性ケアワーカーと女性ケアワーカーの特性と課題を明らかにした。さらに、ケアワーカーの職務意識について、男女の共通点と相違点を検討した。その結果、共通点としては、介護職になるまでの職業キャリアの多性や介護職への就労のきっかけが、相違点としては、職業キャリアについての考えや専門職意識、将来のキャリア形成への期待などが見出された。ケアワークは、女性労働と見なされてきたために、低賃金労働であり続けている。安価な労働力として、多くの女性が正社員ではなく、パートタイムケアワーカーとして採用されてきたことや、組織内の相談職や管理職への昇進というキャリア形成においては、男性ケアワーカーは女性ケアワーカーよりも優遇されてきたことなど、本研究が、介護労働市場が二重の意味でジェンダー構造を孕んでいることを示唆したことは重要な成果である。
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