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2008 年度 実績報告書

知覚、環境、アフォーダンス-生態学的哲学の可能性-

研究課題

研究課題/領域番号 20720007
研究機関高千穂大学

研究代表者

染谷 昌義  高千穂大学, 人間科学部, 准教授 (60422367)

キーワード生態学的アプローチ / アフォーダンス / 知覚の哲学 / 機能特定性 / 心の哲学 / ジェームズ・ギブソン
研究概要

本年度は次の二つの課題を検討した。第一に、アフォーダンスという行動資源を利用する生物のメカニズムについての哲学的検討である。計算論的アプローチでは、感覚器官をとおして入力される不十分な刺激や手がかりから環境についての知識を構成し、この知識に基づいた行動指令を出力すると考えられている。これに代わる考え方として、アフォーダンスを特定する生態学的情報を精査しながら、アフォーダンスに対応する行動を機能的に作り出すような知覚-行動のメカニズムが探られた。生態学的な実証的研究を調査することから明らかになったのは、アフォーダンスは行動をメカニカルに指定(特定)するのではなく、機能的に指定することである。これは課題特定性もしくは機能特定性と呼ばれる生物行動の特徴である。それは特定の課題を達成する手段(行動)が多様であることを意味する。Reedの著書と論文を参考にしたDarwinによるミミズの行動研究の見直しからも機能特定性という特徴を抽出することができた。第二に、脳を含めた神経系の機能を検討した。伝統的に知覚と行動の基本構造を神経系と結びつける場合には「感覚神経-処理指令中枢-運動神経」という機能的な区別がそこに重ねられる。しかし行動が、解剖学的・生理学的な単位とその複合によって指定される機械的な「運動」ではないとすれば、神経系の役割はそのように単純には解釈できない。むしろ神経系は、生態学的情報と機能的行動との連携を作り出すような身体の姿勢と運動を調整する役割を担っていると考えられる。さらに神経細胞の可塑性(学習性)を考慮し、知覚一行為が行われる個別の場面において生態学的情報とアフォーダンスからの選択圧により神経細胞の結線連絡の数と強度が選択されるという見方も示唆された。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2009 2008

すべて 雑誌論文 (3件) 学会発表 (1件) 図書 (4件)

  • [雑誌論文] 人は脳で世界を見ているつて本当なの?2009

    • 著者名/発表者名
      染谷昌義
    • 雑誌名

      大航海 69

      ページ: 100-108

  • [雑誌論文] 行動を生け捕りする-ダーウィンのミミズの研究2009

    • 著者名/発表者名
      染谷昌義
    • 雑誌名

      現代思想4月臨時増刊ダーウィン vol.37, no.5

      ページ: 136-153

  • [雑誌論文] ダーウィンの心理学一わかりやすさに逆らう2008

    • 著者名/発表者名
      染谷昌義
    • 雑誌名

      生物の科学遺伝 vol.62, no.5

      ページ: 45-49

  • [学会発表] Ecological approach to illusion and hallucination : How to respond to the problem of perception2009

    • 著者名/発表者名
      SOMEYA Masayoshi
    • 学会等名
      UTCP Workshop, "Philosophy of Percepti on : Being in the World"
    • 発表場所
      The University of Tokyo, Komaba campus
    • 年月日
      2009-03-06
  • [図書] 『岩波講座哲学05』(「心/脳の哲学の未来--生態学的観点から」)2008

    • 著者名/発表者名
      染谷昌義
    • 総ページ数
      196-232
    • 出版者
      岩波書店
  • [図書] 『ディスポジション配置としての世界』(「行動資源の配置一財貨の生態学と人々の生活学」)2008

    • 著者名/発表者名
      染谷昌義
    • 総ページ数
      85-109
    • 出版者
      現代企画室
  • [図書] 『環境のオントロジー』(「生態学的アプローチの戦略」)2008

    • 著者名/発表者名
      染谷昌義
    • 総ページ数
      29-66
    • 出版者
      春秋社
  • [図書] 『脳神経倫理学の展望』(「『究極のプライバシー』が脅かされる ? -マインド・リーディング技術とプライバシー問題」)2008

    • 著者名/発表者名
      染谷昌義・小口峰樹
    • 総ページ数
      101-126
    • 出版者
      勁草書房

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公開日: 2010-06-11   更新日: 2016-04-21  

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