本年度はユダヤ教とシオニズムの相互関係をめぐる当研究を継続しつつ、関連するシンポジウム「シオニズムの解剖-現代ユダヤ世界におけるディアスポラとイスラエルの相克」(大阪大学グローバルCOEプログラム「コンフリクトの人文学」主催)の実施と報告(2010年10月9-10日)とともに、当研究の研究成果の一部でもある書籍二冊の編集作業を中心とする研究活動を行った。本年度中の刊行には間に合わなかったが、『ディアスポラの力を結集する-ギルロイ、スピヴァク、ボヤーリン兄弟』(赤尾光春・早尾貴紀編、松籟社)と『シオニズムの解剖-現代ユダヤ世界におけるディアスポラとイスラエルの相克』(臼杵陽監修、赤尾光春・早尾貴紀編、人文書院)として平成23年度の前半には刊行が確定しており、目下、最終的な編集作業を行っている(全原稿がすでに揃いまもなく校正にかける段階)。これら二著では、これまでは個別に研究される傾向にあったディアスポラのユダヤ教(文化)とシオニズム及びイスラエル国家(社会)とをめぐる事象を対位法的に関連付けて研究する視座が確立されているが、そうした複眼的視座を発展させる上で、「ガルート(神罰としてのユダヤ人の離散/追放)」の神学に忠実であったがためにシオニズム及びイスラエル国家に原理的な反対を表明し続けてきたユダヤ教超正統派のポリティクスとプラクシスの分析と解明が中心的な役割を果たした。平成23年度には、ユダヤ教とシオニズムの相克をテーマにした単著の刊行を予定しており(平凡社より執筆依頼あり)、本研究プログラムの成果の最終的な実績としたい。
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