本年度も昨年度に引き続き、写本挿絵を中心に画像資料・文献資料の収集と、それらの整理・研究に努めた。 ・ 20年度の研究成果の一部を、論文集(『LVX ARTIVM-越宏一先生退任記念論文集-』に寄稿した。 ・ 当初の予定通り、ニューヨーク(メトロポリタン美術館、モルガン・ライブラリー、及びアンジェ(アンジェ城美術館)での関連展覧会において、貴重な情報・資料を得ることができた。 ・ 画像資料の収集・整理については、これまでの研究の過程から重要性が増してきたブルターニュ由来の写本挿絵に重点を置いて進めた。 15世紀にブルターニュで制作された写本の代表作である《マルグリット・ドルレアンの時〓書》(パリ、国立図書館、ms. lat. 1156B)に<ロアンの画家>工房のモティーフが転用されていることは以前から指摘されていたが、今回の調査で着目した他の3点の重要な作例、《ジャン・ド・モントーバンの時〓書》(パリ、国立図書館、ms. lat.18026)および同名の別作例(レンヌ、主都図書館、MS.1834)、《ディナンの時〓書》(レンヌ、主都図書館、MS.0034)を詳細に検討した結果、<ロアンの画家>工房のモティーフは作品間での一対一のモティーフの転用関係に留まることなく、この地域の工房の様式展開と結びついて好まれ、継承されたのではないかという考察に至った。15世紀フランスにおける地方様式の展開のロジックを探るという、本研究課題のテーマにとって有効な研究を行うことができたと考えている。
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